ドキュメンタリー映画 ZAN 上映会

私がジュゴンに関るようになったのは、1997年、防衛施設局が、米軍普天間基地の移設先の事前調査と称し、辺野古海域で調査を行った時からです。その調査後に作成された数百ページに及ぶ報告書に、「調査区域外でヘリからジュゴンを目撃した」との記載を、私は偶然見つけました。「なぜわざわざ調査区域外の事を書くのだろう?ジュゴンは移動する生き物、本当は辺野古にジュゴンがいるのではないか?」辺野古のお年寄りから昔はジュゴンがいたと聞いてた私は、そう直感しました。
 辺野古にジュゴンがいれば基地建設はできない、と考え、周りに呼び掛け、ジュゴンの食み跡調査などのジュゴンの存在を確認するための調査を開始しました。
 そしてついに、1998年1月13日、日本テレビの上原カメラマンが職を辞してもいいからとの想いで3日間ヘリをチャーターし、二日目に辺野古沖を泳ぐジュゴンの撮影に成功したのです。私たちはあの時、「これで基地建設は止められる!」そう思いました。
 ジュゴンは賢く、穏やかな生き物です。温暖な海で海草を食べ、ゆったりと暮らします。そんな平和の象徴のようなジュゴンは、平和を求める沖縄の海にこそ生きていてほしい。そして、ジュゴンが生きられる環境は、私たち人間にとっても、生きやすい環境であると思います。辺野古の海の埋め立てが進む今も、私たちはこの無謀な基地建設がストップし、ジュゴンが戻ってきてくれる未来をあきらめるわけにはいきません。
 ドキュメンタリー映画ZANは、私たち地元住民にずっと寄り添ってきてくれた日本自然保護協会が企画し、制作されました。大浦湾のもう一つの象徴アオサンゴ群集も映っています。この映画が世界の各地で上映され、賞を取り、そしてその影響もあってか、2019年にはアメリカの海洋学者の組織するNGOミッションブルーが、辺野古・大浦湾を含む天仁屋から松田までを「世界で守られるべき海域Hope Spot(希望の海)」として日本で初めて認定しました。
 名護に住むみなさんには、改めて、映画を通して地域の宝である辺野古・大浦湾の自然を見て頂き、名護市の未来につなぐポテンシャル(可能性)としてどのように守っていくべきか、一緒に考えることができればと思っています。